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東京地方裁判所 昭和43年(特わ)426号 判決

本店所在地

東京都台東区小島二丁目二〇番三号

株式会社 我田和吉商店

(右代表者代表取締役 我田和吉)

本籍

東京都台東区入谷二丁目二七番地

住居

東京都墨田区本所三丁目四番一〇号

株式会社我田和吉商店代表取締役

我田和吉

明治二六年一一月二八日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山同譲次出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告株式会社我田和吉商店を罰金六〇〇万円に、

被告人我田和吉を罰金一二〇万円に各処する。

被告人我田和吉において右罰金を完納しないときは、金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告株式会社我田商店は、東京都台東区小島二丁目二〇番地三号に本店を置き、非鉄金属(ハンダ)の製造、加工及び販売を目的とする資本金四〇〇万円の株式会社であり、被告人我田和吉は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、売上の一部を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三九年一月一日から同年一二月三一日に至る事業年度における被告会社の実際欠損金額は別紙第一修正貸借対照表(昭和三九年一二月三一日現在の分)記載のとおり二二万三、九九七円にすぎず、かつ欠損金の繰戻しによる法人税の還付を受けることができなかつたにもかかわらず、昭和四〇年三月一日、同都台東区蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署におりて同署長に対し、同年度における欠損金額は二、三九五万三、四八七円である旨内容虚偽の確定申告書を提出するとともに、右申告にかかる欠損金額のうち、一、〇〇八万六、〇〇〇円を前事業年度の所得に繰戻すことにより、これに対応する法人税額四〇九万九、〇六〇円の還付申請書を提出し、よつて不正な方法により同年五月一五日、同税務署長から同額の法人税の還付決定を受けたうえ、同年六月二四日、右決定額と還付加算金一万七、一四〇円との合計額四一一万六、一九五円の還付を受けた。

第二、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日に至る事業年度における被告会社の実際所得金額は、別紙第二修正貸借対照表(昭和四〇年一二月三一日現在の分)記載のとおり三、五一七万〇、五二六円であつて、これに対する法人税額は一、二八三万三、〇八〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年二月二八日、前記浅草税務署において同署長に対し、同年度の所得金額八五八万五、二八七円を繰越欠損金から控除したため所得金額及び法人税額は零である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額一、二八三万三、〇八〇円を法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税をほ脱した。

第三、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日に至る事業年度における被告会社の実際所得金額は、別紙第三修正貸借対照表(昭和四一年一二月三一日現在の分)記載のとおり八二七万四、八二二円であつて、これに対する法人税額は二六八万六、一八〇円であつたにもかかわらず、昭和四二年二月二八日、前記浅草税務署において同署長に対し、同年度においては六六二万八、四四五円の欠損金を生じ、納付すべき法人税額は零である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額二六八万六、一八〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税をほ脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、登記官佐野直作作成の登記簿謄本

一、我田守弘、我田愛子、舟山朋子、鈴木弘治の大蔵事務官に対する質問てん末書各一通(但し、我田愛子の分は昭和四二年九月二二日付=以下四二・九・二二の如く略記)

一、田部井京三郎の大蔵事務官に対する質問てん末書四通

一、浅草税務署長堀敏夫、東京国税局長志場喜徳郎各作成の証明書(但し、堀敏夫の分は四三・一・一七)

一、押収にかかる総勘定元帳三冊(昭和四三年押第一、〇五五号の七)並びに法人税決定決議書一綴(同号の八)

一、被告人我田和吉の大蔵事務官に対する質問てん末書六通並びに検察官に対する供述調書一通

一、被告株式会社我田和吉商店代表取締役我田和吉作成の上申書一五通

一、被告人我田和吉の当公判廷における供述

(二)  別紙修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

(1)  現金について、

一、田部井京三郎作成の上申書

一、我田愛子作成の上申書二通(記録NO九八、九九)

一、大蔵事務官久光昭作成の貸金庫使用料調査書、銀行預金利息調査書並びに支払利息調査書

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の売上金額調査書、京三金属工業所(田部井京三郎)の錫地金売上および仕入数量調査書、架空給料調査書並びに架空雑費調査書

(2)  預金について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の銀行調査書(法人分)

一、大蔵事務官久光昭作成の銀行預金等各期末合計残高調査書

(3)  製品、材料、商品について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成のたな卸調査書

一、押収にかかる製品受払経費帳一綴(前同号の一)並びに製品受払簿一冊(同号の六)

(4)  預け金について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の預け金計上漏調査書

一、我田愛子、間瀬勤之助の大蔵事務官に対する質問てん末書各一通(但し、我田愛子は四三・二・二)

(5)  借入金について、

一、住友銀行下谷支店長永田達雄作成の証明書

一、大蔵事務官久光昭作成の銀行借入金残高調査書

(6)  我田和吉勘定について、

一、我田愛子、鈴木弘治各作成の上申書(但し、我田愛子は記録NO一一七)

一、我田愛子の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四三・二・二)

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の我田和吉勘定調査書、銀行調査書(個人分)、我田和吉家計費調査書並びに我田和吉および我田守弘との公表貸借調査書

一、押収にかかる金銭出納帳一冊(前同号の三)並びに日記家計簿一冊(同日の四)

(7)  未納事業税について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の未納事業税調査書

(8)  貸倒引当金について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の貸倒引当金調査書

一、浅草税務署堀敏夫作成の証明書一通(四三・五・一六)

(9)  認定賞与について、

一、大蔵事務官丸山徳次郎作成の修繕費否認調査書

一、押収にかかる領収証等一綴(前同号の二)

(法令の適用)

被告人我田和吉の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項に、第二及び第三の事実はいずれも昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内でこれを処断すべく、よつて同被告人を罰金一二〇万円に処し、罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項により金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告株式会社我田和吉商店については、その代表者たる被告人我田和吉が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については、昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に従い同法第四八条第一項の罰金刑を、第二及び第三の各事実については、昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従い同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内でこれを処断すべく、よつて同被告会社を罰金六〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙第一

修正貸借対照表

株式会社 我田和吉商店 昭和39年12月31日

〈省略〉

別紙第二

修正貸借対照表

株式会社 我田和吉商店 昭和40年12月31日

〈省略〉

別紙第三

修正貸借対照表

株式会社 我田昭吉商店 昭和41年12月31日

〈省略〉

別紙第四

税額計算書

株式会社 我田和吉商店

〈省略〉

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